製薬英語勉強の基本方針
製薬英語を勉強するうえで、目的を設定し、その目的に応じて不要なものを捨てて学習項目の優先順位をつけることが大切であることは別エントリーで既に述べた。
このエントリーでは、具体的に目的別に何を捨てどのような優先順位で学習項目を絞るかを提案したい。目標は簡単のため、以前挙げた3つを引用している:①英語を使って最低限仕事ができれば良い、②英語を武器として英語以外の専門での仕事がしたい、③英語のプロとして通訳者・翻訳者などを目指している。また、前提として大学生程度の英語の土台(TOEIC600程度)はあることを想定する。
Contents
- 1 製薬英語勉強の基本方針
- 1.1 目標:英語を使って最低限仕事ができれば良い
- 1.2 目標:英語以外の専門で英語を武器とする
- 1.3 目標:英語のプロとして通訳者・翻訳者などを目指す
- 1.3.1 基本方針
- 1.3.1.1 発音の矯正
- 1.3.1.2 必修フレーズマスター
- 1.3.1.3 追加フレーズマスター
- 1.3.1.4 必修+追加フレーズマスターの具体的方法
- 1.3.1.5 アウトプットの際に意識すること
- 1.3.1.6 専門分野ごとの用語・フレーズの確認
- 1.3.1.7 専門分野ごとの用語・フレーズの発音確認
- 1.3.1.8 専門分野ごとの用語・フレーズのアウトプット
- 1.3.1.9 発信のための文法の確認
- 1.3.1.10 自分の専門分野及び製薬関連教材の大量インプット
- 1.3.1.11 自分の専門分野以外の教材の大量インプット
- 1.3.1.12 複合インプット及びアウトプット及び通訳・翻訳トレーニング
- 1.3.1.13 習慣化
- 1.3.1 基本方針
目標:英語を使って最低限仕事ができれば良い
基本方針
以前提案したように、100時間程度を使って最低限の発信用フレーズのマスターと受信用のリーディング・リスニングの対策が基本方針になる。
必修フレーズマスター
まず最優先で行う必要があるのは、紹介している必修フレーズをマスターすることである。
ここで言うマスターというのはうろ覚えではなく、自分の血肉となるまで徹底的に身に着けるということである。知っていることと身について活用できることの差は非常に大きい。
このフレーズは私の今までの製薬企業での経験から厳選した(ネイティブスピーカーcheck済み及び音声付き)。各ファンクションの専門的な用語・言い回しが別途必要となることに留意すれば、それだけで発信するためには必要十分であると言っても過言ではない。
日本語でもおぼろげに覚えていて聞けばわかるが、自分から言おうとすると出てこない単語やフレーズがあるはずである。発信用のフレーズと受信用のフレーズを同じくらいの熟練度で放置するのが一番中途半端でいけない。発信フレーズの熟練度を100とすると受信フレーズの熟練度は一桁で良い。
なぜ発信英語の対策を受信英語の対策の前に行うのか?これには2つ理由がある。
まず、1つ目は発信英語のマスターは自分のペースでできるため、相手のペースに合わせる必要がある受信英語のマスターに比べると短期間で可能である。
もう1つは発信英語を先にマスターすることで英語で発信することが容易になり存在感が増し、仕事上の実益があるからである。
たとえば、受信英語を先に磨くとする。極端な例であるが、毎日英語を読んで、聞いてTOEICで900点を超えることができた。しかし、会話はほとんどできないとする。
その場合、テレカンで内容はある程度理解できてもダンマリだと思うが、この場合、Globalメンバーの方々はあなたが理解してようと理解していなかろうと、理解していないので発言しない、又は発言しないのでテレカンに出ていないのと同じとみなす。
一方で発信英語を先にマスターすれば、少なくとも自分の意見は伝えることができるし、わからないことを伝えることもできるので、自分の分野の専門知識でバリューを出している限りにおいては、コミュニケーション上それほど問題は生じない。
必修フレーズマスターの具体的方法
具体的に必修フレーズをマスターするためには、シャドウイング、暗唱やテーマを設定して自分の言いたい事の英作文を試みるのもお金が掛からなくて良いが、オンライン英会話のサービスを利用すると自然にアウトプットできる。
その際、まず必修フレーズをインプットしてアウトプットしないと効果が半減することに留意する。なお、オンライン英会話は相手がネイティブスピーカーでなくても良い。
実際に製薬企業でテレカンすると、アクセントのキツいインド人、ヨーロッパ人が大勢いて彼らの話す多様な英語を最終的に理解する必要があるので、練習でも様々なアクセントを持つ相手と話すのはメリットがある。
この必修フレーズのマスターはには80時間ぐらいを使う。毎日1時間必修フレーズ暗記又はアウトプットに使い、3ヵ月弱続けるイメージである。理想的には会話の時間を週3回以上設定する。
アウトプットの際に意識すること
以前も書いたが、製薬英語の文単位の構成要素は以下のように4つである:①専門用語、②構文、③詳細な文法、④発音。
この構成要素のうち特に重要なのは、①専門用語と②の構文である。このどちらかが間違っていたら、致命的に通じないか誤解が生じる。③の詳細な文法と④発音に関してはひとまず対策不要である。
上記①、②に加えて最重要なのが「一言でいうと何が言いたいのか」という⑤キーメッセージである。何か自分の意見を発信するときはこの3つの要素に留意することで驚くほど省エネで通じる英語にすることができる。
ちなみに、外資製薬企業には英語で業務をすることが当たり前の専門職の方が吐いて捨てるほどいるが、皆さん上記の①、②、⑤のポイントは当たり前のように押さえている。一方で、トップマネジメントクラスでもノンネイティブであれば③、④は捨てている方が多い。
専門分野ごとの用語・フレーズの確認
次に自分の専門分野で頻出する用語・フレーズの確認をする。
自分の専門分野の用語・言い回しが英語で分かる(ある程度英語論文が読める)という方であれば、この時点で英語で発信することではある程度困らなくなるだろう。
自分の分野の頻出専門用語で英語でどういうか分からない用語・言い回し等について、英語リソースを用いて確認をする。この英語リソースについては、ICH、FDA、EMAウェブサイト、各種臨床ガイドライン、医学雑誌等が有用であるが、別途改めてエントリーを設けて取り上げる予定である。
本サイトのバイリンガル製薬業界概説や関連用語集も薬事を中心に一般的な専門用語を学ぶのには役立つだろう。
また、基礎・臨床医学系の英文表現のイロハを学ぶのにおすすめなのが、内山雪枝氏の薬事・申請における英文メディカルライティング入門(I、II、III、IV)である。セミナー資料が基になった教材で当初は数万円で販売されていた。現在は元が取れたのか個人でも購入しやすい金額になっている(それでも4冊全部揃えると2万円であるが)。タイトルは薬事・申請とあるが、実際は医学文書を英語でどう表現するかがテーマであり、医師である内山氏だから書ける英作文留意事項は一読の価値がある。
この用語・表現の確認は100時間の残りの20時間のうち10時間を使って行う。
専門分野ごとの用語・フレーズの発音確認
次に自分の専門分野で頻出する用語・フレーズの発音の確認をする
この目的には、WEB辞書、Youtube、Google翻訳が使える。かなり専門的な医学用語の確認にはステッドマン医学大辞典のような有料の電子辞書を使うと良い。
本サイトのバイリンガル製薬業界概説や関連用語集も薬事を中心に一般的な専門用語を学ぶのには役立つだろう。
英語が苦手で自分の専門の英語論文は読めるが、話すのと聞くのはダメという方は、自分の頭で読む音と実際の発音される音を一致させることができれば一気に専門英語の理解度が上がるはずである。また、話す際にも圧倒的に通じやすくなる。
この発音の確認は100時間のうち残りの10時間を使って行う。
捨てるべき項目
最低限必要な英語をマスターすることが最終ゴールの場合は以下の項目は完全に捨ててしまっても問題ない。最終ゴールがもっと上にある場合は、できる範囲で意識し、完全に捨てはしないものの、完璧主義には陥らないようにする。
①「a」や「the」などの冠詞、②「on」や「at」などの前置詞の正確性、③過去完了などの時制、④1つのことを表現するのに複数の言い方を用いる表現力、⑤三単現のs、⑥単数形・複数形の区別、⑦書き言葉と話し言葉の区別、⑧日常会話、⑨ネイティブのような発音
習慣化
最後に非常に重要なことを1つ。最小限必要な英語をマスターするタイムラインは3ヵ月を意図したが、その後も可能であれば毎日英語に触れる時間を持つことが身につけた英語を維持するのに必要である。
製薬企業では各部署ごとに業務の標準手順を定めたstandard operating procedure: SOPを定めているが、これは会社や組織が正しいことを行い続けるためには、業務のやり方を定型化し、強制力を持って習慣化する必要があることを示している。
個人の人生でも同じである。正しいこと、ここでは英語をマスターして能力を維持するためには、習慣に落とし込むことが必要である。
目標:英語以外の専門で英語を武器とする
基本方針
以前提案したように1,000時間程度を使って、発信用フレーズのマスター及び受信用のリーディング・リスニングのより高度な鍛錬が基本方針になる。なお、このレベルよりも上を最終ゴールとして狙う場合は発音矯正が良い投資となる。
発音の矯正
英語以外の専門をもって英語を武器にしたい場合に、おすすめするのが上にも書いているが、発音の矯正である。
英語には日本語にない音が沢山あり、発音記号上日本語にある音でも厳密には少し音にズレがある。例えば、日本語を上手に話す外国人の日本語に違和感があるのは、発音記号上は同じ音であっても少しズレた音で発音しているからである。少なくとも日本語にない音をすべて発音できるようにしていれば、単語レベルで発音しても非日本人に英語を話す際に、圧倒的に通じやすくなる。
発音を矯正するメリットは他にもある。まず自分の英語がネイティブに近い発音になることで、英語に関して自他ともに達人と認められやすくなり、英語の勉強が一気に面白くなる。また、少なくともネイティブと話す際にネイティブのような発音ができるとやはり、扱いが違ってくる。
具体的に最低限矯正する発音は以下の通りである。
æ、∧、ª、ë、s、ër、v、f、Θ、ð、l、r、η、ōr
(発音記号入力に制限があるため、一部正確でない記号がある)
発音記号で表すとわかりにくいが、具体的な単語にすると以下の通りである。(ネイティブスピーカーの朗読音声付き)
- æ
hat、cat、mat
- ∧
son、cut、up
- ª
top、cop、got
- ë
about、remind、family
- s
sit、seed、sweet
- ër
word、earth、turn
- v
vocal、vegan、violin
- f
feed、feel、found
- Θ
mouth、thousand, south
- ð
this、those、that
- l
love、land、loud
- r
river、rib、round
- η
fang、tongue、going
- ōr
cord、drawer、short
各発音の具体的な練習法等は別途エントリーを設けて解説する。
発音矯正には1,000時間のうち、100時間程度使用する(発音矯正すると新しい口の動かし方に慣れるまで一時的に調音に脳の力を使用するため、話す力が落ちるのに留意)。
必修フレーズマスター
次に最低限仕事に必要な英語を身につける際と同様に紹介している必修フレーズをマスターする。
追加フレーズマスター
目標が英語を武器にすることという人は必修フレーズの他に1冊ビジネス英語のフレーズ集をマスターするのが良い。
こうすることで幅広い状況でも発信できる応用力が身につく。この追加フレーズのマスターは原則必修フレーズと同様に、完全に血肉となりスムーズにアウトプットができるところまで行う。
必修+追加フレーズマスターの具体的方法
最低限仕事に必要な英語を身につける場合と同様に必修+追加フレーズを、シャドウイング、暗唱やテーマを設定して自分の言いたい事の英作文を試みたり、オンライン英会話のサービスを利用して身につける。
この必修+追加フレーズのマスターはには1,000時間の残り900時間のうち、200時間ぐらいを使う。毎日1時間必修+追加フレーズ暗記又はアウトプットに使い、7ヵ月弱続けるイメージである。理想的には会話の時間を週3回以上設定する。
アウトプットの際に意識すること
繰り返し書いてきたが、以下の4つの製薬英語の構成要素を意識する:①専門用語、②構文、③詳細な文法、④発音。
この構成要素のうち特に重要なのは、①専門用語と②の構文である。③の詳細な文法に関しては特に対策不要であり、④の発音に関しては既に対策済みである。
「一言でいうと何が言いたいのか」という⑤キーメッセージを常に意識して発信する。
専門分野ごとの用語・フレーズの確認
次に自分の専門分野で頻出する用語・フレーズの確認をする。
必要最低限の英語を身につける場合と同様に、自分の分野の頻出専門用語・言い回し等について適宜確認をする。この英語リソースについては、ICH、FDA、EMAウェブサイト、各種臨床ガイドライン、医学雑誌等が有用である。
本サイトのバイリンガル製薬業界概説や関連用語集も薬事を中心に一般的な専門用語を学ぶのには役立つだろう。
また、基礎・臨床医学系の英文表現のイロハを学ぶのにおすすめなのが、内山雪枝氏の薬事・申請における英文メディカルライティング入門(I、II、III、IV)である。セミナー資料が基になった教材で当初は数万円で販売されていた。現在は元が取れたのか個人でも購入しやすい金額になっている(それでも4冊全部揃えると2万円であるが)。タイトルは薬事・申請とあるが、実際は医学文書を英語でどう表現するかがテーマであり、医師である内山氏だから書ける英作文留意事項は一読の価値がある。
この用語・表現の確認は1,000時間の残りの700時間のうち100時間を使って行う。
専門分野ごとの用語・フレーズの発音確認
次に自分の専門分野で頻出する用語・フレーズの発音の確認をする
必要最低限の英語を身につける場合と同様に、WEB辞書、Youtube、Google翻訳が使える。かなり専門的な医学用語の確認にはステッドマン医学大辞典のような有料の電子辞書を使うと良い。
本サイトのバイリンガル製薬業界概説や関連用語集も薬事を中心に一般的な専門用語を学ぶのには役立つだろう。
最低限英語をマスターするが目標の時に比較して、より正確な発音を意識する。
この発音の確認は1,000時間の残りの600時間のうち100時間を使って行う。
自分の専門分野及び製薬関連教材の大量インプット
次に受信英語で困ることがないように、自分の専門分野及び製薬関連の教材を用いて大量のリーディング・リスニングのインプットををする。
この大量インプットの教材としては、自分の専門分野の英文雑誌を定期購読しても良いし、興味のあるPodcastやYoutubeで業界人のインタビューを視聴しても良い。また、おすすめするのがKindleで洋書を購読することである。紙の本に比較して、語学習得サポート機能がついているので、難しい単語にも簡単な言い換えフレーズが表示されて、サクサク読める。
重要なのは、自分の興味の続くものをできるだけ継続して続けることである。
この大量インプットに使える教材については、発信英語関連のエントリーが落ち着き次第、おいおい紹介していきたい。
大量インプットには1,000時間の残りの500時間を使う。
捨てるべき項目
英語以外の専門で英語を武器とすることが最終ゴールの場合でも下記の項目は基本的に捨ててしまっても良い。自分が自然と思う範囲で正確性を意識するが、意識しすぎて発信する際の足かせにならないようにする。
①「a」や「the」などの冠詞、②「on」や「at」などの前置詞の正確性、③過去完了などの時制、④1つのことを表現するのに複数の言い方を用いる表現力、⑤三単現のs、⑥単数形・複数形の区別、⑦書き言葉と話し言葉の区別
習慣化
最低限の英語を身につける場合と同様である。英語以外の専門分野で英語を武器にするタイムラインは1日1時間程度時間を割くとして、2年~3年を意図したが、その後も可能であれば話すことを含めて、毎日英語に触れる時間を持つことが身につけた英語を維持するのに必要である。
英語をマスターして能力を維持するために、習慣に落とし込むことが大切である。
目標:英語のプロとして通訳者・翻訳者などを目指す
基本方針
以前提案したように10,000時間以上使うことを前提に、幅広い発信用フレーズと専門英語以外も含めた幅広いリーディング・リスニングの理解力を伸ばす高度かつ包括的な鍛錬が基本方針になる。また、プロを目指す場合、英語の発音の矯正も必須である。
発音の矯正
英語のプロを目指す場合は上にも書いているが、発音の矯正が必須である。
英語には日本語にない音が沢山あり、発音記号上日本語にある音でも厳密には少し音にズレがある。したがって、まずは英語のキーボードをすべて揃えることを目標とする。理想的には日本語にない音だけでなく、日本語にある音も含めてすべて新しい音をインストールするイメージである。
理由は、その方が英語と日本語で完全に別の発音を使い分けることになるので、日本語訛りの英語や、英語の影響を受けて日本語の発音が変になったりすることを排除できるからである。
また、以前に書いたように、発音がネイティブ並みになれば、単語レベルで発音しても非日本人に英語を話す際に、圧倒的に通じやすくなる。また、自他ともに達人と認められやすくなり、英語の勉強が一気に面白くなり、ネイティブスピーカーからの扱いが違ってくる。
矯正する発音は英語の発音要素すべてある。
発音矯正には10,000時間のうち、200時間程度使用する(発音矯正すると新しい口の動かし方に慣れるまで一時的に調音に脳の力を使用するため、話す力が落ちるのに留意。発音を矯正するとその後の伸び方が違ってくるなどいろんな意味での土台となるので最初に行う)。
必修フレーズマスター
次に最低限仕事に必要な英語を身につける際と同様に紹介している必修フレーズをマスターする。これは現在目の前に差し迫って製薬英語をマスターするという課題があるという前提で記載したが、もし基礎固めしてから英語をマスターしてプロを目指すということであれば、次に記載している追加フレーズを先にマスターしても良い。
追加フレーズマスター
目標が英語のプロを目指すことという人は必修フレーズの他に5冊程度日常会話及びビジネス英語のフレーズ集をマスターするのが良い。
好みの問題でスピードラーニングなどのシステム教材を使用しても良い。
この追加フレーズのマスターは原則必修フレーズと同様に、完全に血肉となりスムーズにアウトプットができるところまで行う。
必修+追加フレーズマスターの具体的方法
最低限仕事に必要な英語を身につける場合と同様に必修+追加フレーズを、シャドウイング、暗唱やテーマを設定して自分の言いたい事の英作文を試みたり、オンライン英会話のサービスを利用して身につける。このステップを終えることでいかなる状況にも英語で対応できる発信力が身につく。
この必修+追加フレーズのマスターはには10,000時間の残り9,800時間のうち、1,000時間を使う。毎日3時間必修+追加フレーズ暗記又はアウトプットに使い、12ヵ月弱続けるイメージである。理想的には会話の時間を週3回以上設定する。
アウトプットの際に意識すること
繰り返し書いてきたが、以下の4つの製薬英語の構成要素を意識する:①専門用語、②構文、③詳細な文法、④発音。
この構成要素のうち特に重要なのは、①専門用語と②の構文であることは口が酸っぱくなるほど述べてきたが、プロを目指す場合は、③の詳細な文法に関しても最終的にはマスターする必要がある。④の発音に関しては理想的にはネイティブ並み、最低でも英語のキーボードで欠けている音がない状態にする。
このレベルでも「一言でいうと何が言いたいのか」という⑤キーメッセージは常に意識する。
専門分野ごとの用語・フレーズの確認
次に自分の専門分野で頻出する用語・フレーズの確認をする。
必要最低限の英語を身につける場合と同様に、自分の分野の頻出専門用語・言い回し等について適宜確認をする。この英語リソースについては、ICH、FDA、EMAウェブサイト、各種臨床ガイドライン、医学雑誌等が有用である。
本サイトのバイリンガル製薬業界概説や関連用語集も薬事を中心に一般的な専門用語を学ぶのには役立つだろう。
また、基礎・臨床医学系の英文表現のイロハを学ぶのにおすすめなのが、内山雪枝氏の薬事・申請における英文メディカルライティング入門(I、II、III、IV)である。セミナー資料が基になった教材で当初は数万円で販売されていた。現在は元が取れたのか個人でも購入しやすい金額になっている(それでも4冊全部揃えると2万円であるが)。タイトルは薬事・申請とあるが、実際は医学文書を英語でどう表現するかがテーマであり、医師である内山氏だから書ける英作文留意事項は一読の価値がある。
この用語・表現の確認は10,000時間の残りの8,800時間のうち200時間を使って行う。
専門分野ごとの用語・フレーズの発音確認
次に自分の専門分野で頻出する用語・フレーズの発音の確認をする
必要最低限の英語を身につける場合と同様に、WEB辞書、Youtube、Google翻訳が使える。かなり専門的な医学用語の確認にはステッドマン医学大辞典のような有料の電子辞書を使うと良い。
本サイトのバイリンガル製薬業界概説や関連用語集も薬事を中心に一般的な専門用語を学ぶのには役立つだろう。
このレベルでも正確な発音を意識する。
この発音の確認は10,000時間の残りの8,600時間のうち200時間を使って行う。
専門分野ごとの用語・フレーズのアウトプット
4~6のフレーズマスターで行ったプロセスを自分の専門分野で頻出する用語・フレーズにも適用する。具体的には、シャドウイング、暗唱やテーマを設定して自分の言いたい事の英作文を試みたり、オンライン英会話のサービスを利用して身につける。
このアウトプットは10,000時間の残りの8,400時間のうち200時間を使って行う。
発信のための文法の確認
ここまで終了したら、文法本を1冊眺めて理解が曖昧なところを確認する。あくまでも文法のための文法ではなく発信のための文法学習であることを意識する。
この文法の確認は10,000時間の残りの8,200時間のうち100時間を使って行う。なお、文法の確認はフレーズマスターの際にも不明な点が生じたら適宜行う。
自分の専門分野及び製薬関連教材の大量インプット
次に受信英語で困ることがないように、自分の専門分野及び製薬関連の教材を用いて大量のリーディング・リスニングのインプットををする。
この大量インプットの教材としては、自分の専門分野の英文雑誌を定期購読しても良いし、興味のあるPodcastやYoutubeで業界人のインタビューを視聴しても良い。Kindleで洋書を購読するのも紙の本に比較して、語学習得サポート機能がついているので効果的である。
重要なのは、自分の興味の続くもの中心に幅広く継続して続けることである。
大量インプットには10,000時間の残りの8,100時間のうち1,000時間を使う。
自分の専門分野以外の教材の大量インプット
自分の専門分野及び製薬関連以外の幅広い教材を一般教養としてインプットする。Timeなどの英文雑誌、CNNなどのインターネットニュースサイトを含めた広い分野の英語に触れる。
この大量インプットには10,000時間の残りの7,100時間のうち500時間を使う。
複合インプット及びアウトプット及び通訳・翻訳トレーニング
2~12までのプロセスを終了すれば、英語の能力試験で図ることのできないレベルに到達するので、自分の感覚を頼りにわからないことをどんどん調べてながら、インプットとアウトプットを繰り返す。また、具体的な通訳や翻訳のスキルは英語能力とは別に磨く必要のあるものであり、適宜身につける。
この複合インプット・アウトプット及び通訳・翻訳トレーニングには10,000時間の残りの6,600時間すべてを使う。
習慣化
英語のプロを目指すタイムラインは1日3時間程度時間を割くとして、10年ほどを意図したが、その後も可能であれば話すことを含めて、毎日英語に触れる時間を持つことが身につけた英語を維持するのに必要である。
何度も繰り返すが、英語をマスターして能力を維持するために、習慣に落とし込むことが必須である。