11文!目と耳から服用するくすりの英語#35

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https://www.mag2.com/m/0001684701.html#detailbox

■例文:

More than half of new drugs entering the German healthcare system have not been shown to add benefit.

 

参考

https://www.bmj.com/content/366/bmj.l4340

(リンク先へのアクセスは自己責任でお願いします)

■音声:

■語彙:

new drug(s):新薬

 

■重要表現・解説:

more than half of [名詞]:○○の半分より多くの。

 

entering [名詞]:上市された。元々は「入る」という意味

 

the German healthcare system:ドイツの医療制度

 

be not shown to [動詞]:○○していないことが示される

 

add benefit:ベネフィットを加える

■訳:

ドイツの医療制度で上市された新薬の半数以上に追加ベネフィットがないことが示された。

 

■省エネフレーズ:

More than half of new drug entering German healthcare system is not shown to add benefit.

 

このフレーズを実際に自分で活用する際は、冠詞、完了形、3単現のs及び複数形を省略したり、前置詞のミスは無視しても十分通じる。
今回は、冠詞、完了形を削除し、複数形を単数形とした。

 

省エネフレーズに関しての詳細は、製薬英語マスターの労力を8割減らすための3つのポイント(保存版)を参照されたい。

■編集後記

こんにちはシュウです。

今回はドイツの費用対効果評価機関Institute for Quality and Efficiency in Health Care(IQWiG)が投稿した興味深い論文の内容から「新薬と付加価値」をテーマにしました。

 

例文は論文の主張の1つですが、近年の新薬は既存の治療に比較して追加の価値を生んでないものがかなりの割合で含まれているというものです。

なかなか衝撃的な内容ですが、逆に言えば一定数の革新的な新薬は上市されているということでもあります。

 

費用対効果に関しては以前にも別のエントリーで取り上げましたが、費用対効果の基本的な考え方として既にある治療オプションと比較してどれくらい効果が期待できるのかというのがあります。

既存の治療オプションに比較して、新規の治療オプションが大幅に患者のQOLを改善するということであれば、費用対効果の評価は良くなるし、既存の治療オプションと似たり寄ったりの効果であれば費用対効果の評価は辛くなるということです。

 

論文中では、新薬が価値を生まない理由としていくつかの要因を挙げています。

 

まず、規制当局が十分でないエビデンスで新薬を承認するトレンドがあること。

 

米国のFast Track、Breakthrough Therapy、欧州のPRIM(priority medicines)、日本の先駆け審査指定制度などの早期承認制度がありますが、少ない有効性及び安全性のエビデンスで仮免を与えて、市販後の成績次第で正式な免許に移行する仕組みです。革新的な医薬品が早く医療現場に届くようにという観点がこれらの制度の背景にあります。

早期承認で世に出ている医薬品はそれなりにありますが、市販後の第III相で想定通りの結果が出ないこともあり、最悪の場合、承認取り消しとなります。

 

また、近年の医薬品開発のスタンダードとして、プラセボ対照の臨床試験が主流であり、既存の治療と比べてどれくらい良いのかは分からないこと。

 

このあたりは、医薬品の承認審査と費用対効果の審査の溝を感じる内容と思いました。

昔は実薬と新薬を比較する実薬対照の試験が行われていましたが、必要な症例数が多いこととプラセボ効果を排除して真の医薬品の効果を評価するために、現在では試験される新薬と同じ形で薬効がないプラセボと比較する試験がスタンダードになっています。

両方が必要ということにすると大幅に医薬品開発のハードルが上がります。

 

3つ目の要因としては、医薬品の開発は成功率が低いこともあり、最初に当たった製品と同様のメカニズムで効く製品を複数の会社が開発する状況になりやすいこと。

 

この点は医薬品開発もビジネス上の投資であることを考慮すると仕方がない面があります。

投資のリスクとリターンを吟味すると、そこそこの確率で承認され、そこそこ売れる製品を開発するという選択肢が現実的な会社もそれなりにあると思います。また、1製品が市場を独占するのは公平な競争や安定供給の観点からも好ましくないので、規制当局の観点からも複数の製品を承認することはメリットがあります。

 

さらに論文では、領域ごとに新薬の付加価値に大きな違いがあることも述べられています。

付加価値が大きいのが抗がん剤領域、逆に小さいのが精神神経系の領域です。

このあたりはイノベーションが盛んな領域とそうでない領域が明確に分かれている印象です。

 

論文では提案事項として、新薬承認審査には十分なエビデンスや既存の治療オプションと比較が容易な実薬対照試験データを要求し、薬価は既存の治療オプションと比較した効果の程度で決めるべきであり、開発対象医薬品も行政が主導し医療現場のニーズをより良く反映すべきと主張しています。

 

医療現場では提供した医療の量ではなく、質=アウトカムや患者の視点を重視するValue based Medicineがより重視されてきているようです。

これからの医薬品開発はより医療現場や患者さんの声を反映していく必要があるのは間違いないでしょう。

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