英語の勉強よりも大切なこと

今回のエントリーは人によっては耳が痛い内容かもしれない。ただ、現実を無視してリソースをつぎ込むのは人生の無駄遣いなので、あえて書くことにした。

これまで、製薬英語を勉強するうえで、目的を設定し、その目的に応じて不要なものを捨てて学習項目の優先順位をつけることが大切であることは別のエントリーで既に述べた。

また目標を設定したら具体的に目的別に何を捨てどのような優先順位で学習項目を絞るかについて3つの目標別に具体的な学習方針の提案をしてきた:①英語を使って最低限仕事ができれば良い(100時間コース)、②英語を武器として英語以外の専門での仕事がしたい(1,000時間コース)、③英語のプロとして通訳者・翻訳者などを目指している(10,000時間コース)。

製薬英語的推奨コース

これらのコースで製薬英語のトリセツ的におすすめなのはどれかと聞かれたら、迷わず②の1,000時間コースを挙げる。理由は現実的に専門を十分に磨きつつ、Globalに通用する英語を身につけられる選択肢であるからだ。

製薬企業では、原則として専門分野で仕事ができて英語もできる人は大勢いるが、専門分野を持たず英語のみの人のキャリアパスはほとんどないに等しい。

製薬会社で活躍できるのは、MR、MBAを持つマーケター、医師、PhD、専門性のある修士である。製薬企業はすでに新卒の段階で狭き門であり、これからはより一層この傾向が強まると思って良い。

この意味で時間を費やす優先順位は専門>>>>>英語なのは明らかであるが、強調し過ぎることはないと思う。

したがって、今現在製薬業界を目指していて、何で勝負するか決めかねている人は、まずは英語を忘れて武器となる専門を磨くことに注力したほうが良い。これは製薬業界だけに限らずに言えることだと思う。

特別な英語バックグランドのない人が英語で勝負しようとするとエントリーポジションに就くためにもれなく③の10,000時間コースになるからである。しかも原則、製薬企業の外注先で通訳者・翻訳者として仕事をすることになる。

なお、医師、PhD、既に十分な専門性を持っているが、十分な英語力がない場合、現状①の100時間コースを完了するだけでも、外資で生き延びられるだけの英語力は身につけることができる。十分に専門分野で貢献できる限りにおいてであるが。

言葉のプロとは

日本の外資企業はある意味でGlobalな世界の縮図な訳であるが、求められるのは専門分野に秀でたprofessionalである。

専門家と一般人をわけ隔てるのは、ある分野について専門用語を用いて同じ理解をできるかどうかである。つまり、専門家というのはその分野の言葉のプロである。

製薬会社で英語の申請資料を外注して和訳したものをチェックするのは、各分野の専門家であるが、日本語の申請資料を外注して英訳したものをチェックするのも、同じく各分野の専門家である。仮に、その専門家が英語にそれほど堪能でなくても、専門用語や専門的な言い回しには明るいことを期待されている。この役割は今後変わることはないだろう。

③の英語のプロが言葉のプロでないかと思われるかもしれないが、英語という言葉の知識の観点からはその通りなのであるが、ある特定の分野について専門用語の定義を語れるほど深く知らないという意味では限界がある。

例えば、日本人は基本的に日本語を流暢に操るため、日本人の間では日本語ができるだけでは競争力はほとんどない。

英語ができればそれだけで競争力があるように見えるが、完璧でないかつある分野で専門家のレベルでもない英語であればそれだけで競争力があるわけではない。

かつて、日本では英語ができる人が驚くほど少なかったこともあり、英語能力が過大評価されていただけである。今後はある程度の英語能力は持っていて当たり前の能力になっていくだろう。

今後は日本語で深く専門用語の定義について理解し、また英語でも同様に専門用語を用いて非日本人の専門家と意思疎通が図れる人材がより一層求められることになる。

以上を踏まえると③は、かけた労力の割にリターンはそれほどなくコストパフォーマンスはあまり良くない(もちろん好きで目指すというのであれば否定しない)。

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