11文!目と耳から服用するくすりの英語#27

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https://www.mag2.com/m/0001684701.html#detailbox

■例文:

Research shows that more than a quarter of the FDA reviewers involved in cancer and hematology drug approvals from 2001 through 2010 left the agency and now work or consult for pharmaceutical companies.

■音声:

■語彙:

research:研究。通常不可算名詞扱い。冠詞なしで、複数形としなくても良い。

FDA:米国の医薬品等規制当局

reviewer(s):審査官。申請された医薬品等を評価し承認の可否を判断する。通常臨床医学、薬理学、薬物動態学、生物統計学、非臨床、品質等の各専門家からなるチームで審査する。

cancer and hematology drug approvals:がん、血液疾患治療薬の承認

agency(ies):機関。通常規制当局の代名詞として用いる。

pharmaceutical company(ies):製薬企業

■重要表現・解説:

[名詞]show that [主語+動詞]:○○が××であることを示す。「××」に相当する内容は[主語+動詞]でも[名詞]でも良い。なお、[that]はあってもなくても良い。特に名詞の場合は不要で、[名詞]show [名詞]となる。例えば「Research shows the results of [試験での検討内容]」というようにも使える。

more than a quarter of [名詞]:4分の1以上の。なお、厳密には「more than [数字]」はその数字を含まない。したがってここでは4分の1を含んだ「4分の1以上」ではなく、「4分の1よりも多くの」の意味

involved in [名詞]:○○に関わった

from 2001 through 2010:2001年から2010年まで。「from 2001 to 2010」としても通常同じ意味に解釈されるが、厳密には「through」とすると2010年を含み、「to」とすると2010年を含まない。

leave [名詞]:○○から離れる。ここでは退職したという意味

work or consult for [名詞]:○○のために働いたりコンサルティングする

■訳:

研究によると、2001年から2010年の間にがんや血液疾患治療薬の承認に携わったFDAの審査官のうち4分の1以上が、現在は製薬企業で勤務したりコンサルティングしている。

■省エネフレーズ:

Research show that more than 25% FDA reviewers involved in cancer and hematology drug approval from 2001 to 2010 now work or consult for pharmaceutical companies.

このフレーズを実際に自分で活用する際は、冠詞、完了形、3単現のs及び複数形を省略したり、前置詞のミスは無視しても十分通じる。
今回は、冠詞、3単現のsを削除し、複数形を単数形とした。また、意味がほぼ変わらないので、「a quarter of 」を「25%」、「through」を「to」とし、「left the agency and」及び「or consult」を削除した。

 

省エネフレーズに関しての詳細は、製薬英語マスターの労力を8割減らすための3つのポイント(保存版)を参照されたい。

■編集後記

今回は、規制当局と利益相反を採り上げました。

利益相反を簡単に説明すると、「複数の利権者に関与している人間が、ある行為をすることである利権者には利益となるが一方である利権者には不利益となる状況」のことを言います。

ちなみに英語でconflict of interest(COI)と言います。

 

製薬業界では医薬品に関する臨床試験の結果等を科学雑誌にPublishする際に、通常製薬会社の社員ではなく臨床試験に関わった著名な医師が著者となるため、情報の透明性を確保するため大切な概念です。

 

このような論文では著者は医師ですが、試験研究費は製薬会社から拠出されていることを公開することで著者は製薬会社と読者の利益相反に対応しています。

 

また、規制当局の審査でも専門協議や薬事・食品衛生審議会の部会などで、ある医薬品が承認可能かどうかについて著名な外部の専門家に意見を求めます。このような専門家は引く手あまたのため複数の医薬品、医療機器の開発に携わっていたり、複数の製薬企業とコンサルティング契約を結んでいたりします。審査の公平性、透明性を確保するため、審査される医薬品と利害関係のある専門家には審査依頼がされないような仕組みになっています。

 

さて、前置きが長くなってしまいましたが、今回の例文はBritish Medical Journalに掲載された研究の結果からです。FDAの審査官の退職後の身の振り方を調査した研究はほとんどないようですが、利益相反の観点からどうなのかということです。

米国では製薬業界内の産官の間の人材の流動性が日本以上に大きく、製薬企業から規制当局またその逆へのrevolving doorと呼ばれる人材移動が珍しくありません。

 

最近辞職を表明したFDA長官のScott Gottliebやその上位機関であるHealth and Human Services(HHS)長官のAlex Azarも例外でなく、医薬品行政とメガファーマ両方の職歴があります。ちなみにこれらのポジションは大統領の指名で決まります。

当然米国ではこのrevolving doorが医薬品等の承認審査に及ぼす利益相反について活発に議論されています。

日本でFDAとHHSの長官に相当するのは、厚労省の医薬・生活衛生局長と厚労大臣と思いますが、前者は官僚であり、後者は政治家です。

 

日本では天下りという官から産への人材移動がネガティブなニュアンスで以前は語られていましたが、日本では米国ほど人材の流動性は高くないようです。

この背景は文化的なものもあると思いますが、PMDAが利益相反に関して非常に厳しい対応をとっていることも要因と思います。

少し前にPMDAは在職中に製薬企業とコンサルティング契約を結んでいた職員を懲戒解雇にしています。また、今後同様なことが起こらないようにホットラインを設けました。なお、PMDAを退職した後でも医薬品関連企業への就職が一定期間制限されます。

 

米国のrevolving doorのように少し前まで審査側にいた人間が、退職後すぐに申請側に回って過去の同僚と製品の審査に関して議論するというのは、少し馴れ合い感が強く不適切に感じます。

一方で、規制当局で業務経験のある人が民間で働くことにより、規制当局と民間企業の考え方の差や民間企業の当局イメージと実態のギャップについて啓蒙できるメリットが大きいので、日本でも人材の流動性がもう少し進んでも良いのではと思います。

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