1回1文!目と耳から服用するくすりの英語#22(高脂血症薬と薬価)

11文!目と耳から服用するくすりの英語#22

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https://www.mag2.com/m/0001684701.html#detailbox

■例文:

Praluent reduced the risk of cardiovascular events by 15%, and the benefit was even greater in high-risk patients with high levels of LDL.

 

■音声:

通常版

電話版

■語彙:

cardiovascular event(s):心血管イベント。心臓発作や脳卒中など

benefit(s):ベネフィット。医薬品等の投与による利益

high-risk patient(s):リスクの高い患者。ここではLDLコレステロールが高く心血管イベントのリスクが高い患者

■重要表現・解説:

reduce [名詞] by [割合]:○○割減少する

the risk of [名詞]:○○のリスク

greater in [名詞]:○○でより大きい

with high levels of LDL:LDL値が高く。LDLはlow density lipoproteinでいわゆる悪玉コレステロール

■訳:

Praluentにより心血管イベントリスクが15%減少し、そのベネフィットはLDL値が高いハイリスクの患者でより顕著であった。

■省エネフレーズ:

Praluent reduced cardiovascular event risk by 15%, and benefit was even greater in high-risk patient with high LDL level.

このフレーズを実際に自分で活用する際は、冠詞、完了形、3単現のs及び複数形を省略したり、前置詞のミスは無視しても十分通じる。
今回は、冠詞を削除し、複数形を単数形とした。また「the risk of cardiovascular events」を「cardiovascular event risk」、「high levels of LDL」を「high LDL level」と簡素化した。

省エネフレーズに関しての詳細は、製薬英語マスターの労力を8割減らすための3つのポイント(保存版)(http://pharma-english.com/archives/64)を参照されたい。

■編集後記

今回は抗体高脂血症薬を取り上げました。

背景は米国でAmgenのRepathaとSanofiのPraluentが、この抗PCSK9抗体製剤と呼ばれる薬剤のシェア拡大を狙って激しく競り合っているという状況です。

製品を上市したのはわずかにSanofiが早かったのですが、Amgenもほぼ同時にFDA承認を取得しました。
それ以来AmgenはSanofiが薬剤に関する特許を侵害しているとして訴訟を起こして争いました。しかし、最終的にSanofiの製品販売を差し止めることはできませんでした。

そこで次の戦略として、Amgenは当初年間14000ドル程度だったRepathaの薬価を6000ドル程度に大胆にカットしました。
こうすることで米国の費用対効果の評価機関であるInstitute for Clinical and Economic Review(ICER)が費用対効果的と考えるラインをクリアするとともに、薬価削減を狙っているトランプ政権へのアピールになります。

今回の例文はそれに応じる形で「Sanofiも当初14000ドル程度だったPraluentの薬価を6000ドル程度にカットした」というニュースの表現です。

高脂血症は放置しておくと心臓発作や脳卒中など致命的な病態のリスクが上昇します。この2つの薬剤は当初は血中LDL値を下げるという効能・効果だったのですが、大規模な試験を行い実際に心血管イベントの発現率を下げる効果があることを実証しました。

なお、日本でもこの2つの薬剤は承認されています。どちらも高薬価で用法・用量により年間60~100万円程度です。
以前も触れましたが抗体製剤による薬価・医療費高騰は問題になっており、この抗PCSK9抗体はオプジーボなどの免疫チェックポイント阻害剤と同様に初めて最適使用推進ガイドラインの対象となりました。

最適使用推進ガイドラインというのは、高騰する医療費に歯止めをかけるために、医薬品の効能・効果とは別に対象患者や使用可能な医師等に制限をかける仕組みです。

医薬品の開発のためには非常に高額の資本が必要になります。
そして上市まで漕ぎつけられる医薬品は非常に少ないので、上市後の医薬品で失敗した医薬品のコストも回収する必要があります。
そのため、製薬会社が継続的に魅力的な医薬品を開発するためには、薬価制度も含めてその国が投資対象として魅力的でなければいけません。

医薬品の価格はほぼ製造原価と臨床上のベネフィットの大きさで決まるので、効果的な医薬品が高いのはある意味当たり前です。

この記事を読んでいる方々には高脂血症の方もそうでない方もいると思いますが、心血管イベント予防のための年間60万は高いでしょうか?

 

電話英語音声も追加しています。

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