1回1文!目と耳から服用するくすりの英語#23(医薬品の回収と品質)

11文!目と耳から服用するくすりの英語#23

まぐまぐのメルマガのバックナンバーを公開しています。

最新情報を知りたい場合は登録をお願いします。

メルマガの登録・解除はこちら

https://www.mag2.com/m/0001684701.html#detailbox

■例文:

Pfizer's Japan affiliate is recalling the five lots of its blood pressure combination drug because its API contains impurities that are probable carcinogens.

 

■音声:

通常版

電話版

■語彙:

affiliate(s):関連会社

lot(s):(製造)ロット

blood pressure:血圧。ここでは血圧降下剤を意味している。

combination drug(s):コンビネーション医薬品。いわゆる配合剤。コンビ―ネーション製品は2つ以上の医薬品、医療機器等の組合せから構成される製品を指す。今回問題になったアムバロ配合錠は、2種類の降圧剤(アンジオテンシン受容体拮抗薬のバルサルタンとカルシウム拮抗薬のアムロジピンベシル酸塩)のコンビネーション製品である。

API(s):医薬品の有効成分であり正式には「active pharmaceutical ingredient(s)」。いわゆる原薬。

impurity(ies):不純物

probable carcinogen(s):発がん性リスクのある物質。「carcinogen」が発がん性物質でそれに可能性を示す「probable」が付いている。

■重要表現・解説:

contain:含有する

recall:回収する。ここでは動詞で用いられているが、名詞でも用いられる。

■訳:

原薬に発がんリスクのある物質が混入したため、Pfizerの日本法人が血圧降下配合剤5ロットを回収している。

■省エネフレーズ:

Pfizer Japan is recalling five lot of blood pressure combination drug because API contain impurity that is probable carcinogen.

このフレーズを実際に自分で活用する際は、冠詞、完了形、3単現のs及び複数形を省略したり、前置詞のミスは無視しても十分通じる。
今回は、冠詞、3単現のsを削除し、複数形を単数形とした。また「Pfizer's Japan affiliate」を「Pfizer Japan」と簡素化した。

省エネフレーズに関しての詳細は、製薬英語マスターの労力を8割減らすための3つのポイント(保存版)(http://pharma-english.com/archives/64)を参照されたい。

■編集後記

今回は医薬品の品質と回収を取り上げました。
医薬品は有効性と安全性に注目が集まることも多いですが、品質も極めて大切です。

例文は今月の最初に報道された、Pfizerの血圧降下薬のリコール=回収のニュースから引用しました。

問題の背景は、Pfizerの原薬供給元であるMylanのインド工場で製造された原薬に、発がん性リスクのあるN-ニトロソジエチルアミン(NDEA)とN-ニトロソジメチルアミン(NDMA)が混入したことにあります。

この問題は2018年の後半から起こっており、MylanだけでなくTevaや中国のZhejiang Huahai Pharmaceuticalの原薬でも見られたため、世界的なアンジオテンシン受容体拮抗薬の回収に繋がりました。

普段医薬品を服用する際に、その品質について疑いを持っている方はあまり多くないと思います。
ただ、医薬品も他の多くの日常品と同様に工場で大量生産される工業製品です。
可能性は低いですが低品質な製品が市場に出てしまうこともあります。

医薬品が普通の工業製品と大きく異なるのは、以下の2点について十分な検討・検証がなされたうえで製造されていることです。
(1)多様な環境で一定期間保存されたときにも常に意図された品質を発揮できる
(2)複数の異なる製造所やロット間で品質のばらつきが許容範囲内になる

これらの品質要件を担保するために、ICHの品質関係のガイドラインやGood Manufacturing Practice(GMP)が設定されています。

今回のニュースで分かるように、医薬品の原薬は海外で製造されていることが多く、その品質を担保するためには国際的に共通の基準を持つことが大切になります。

これまでGMPや品質システム要件は国によって異なることが多かったため、国際的な調和を目的としてPIC/S(Pharmaceutical Inspection Convention and Pharmaceutical Inspection Co-operation Scheme)という団体が活動しています。
日本も2014年に加盟しました。

なお、今回の不純物混入でPfizerはクラスIの自主回収を行っています。

日本での医薬品等の回収の要件については、医薬品医療機器等法(薬機法)により規定されており、回収に着手したこと及び回収の状況を厚生労働大臣に報告する必要があります。
クラスはIからIIIまで規定されていて、クラスIは「製品の使用等が、重篤な健康被害又は死亡の原因となり得る状況」と一番厳しいカテゴリーになります。

少し前に、BCGワクチンにヒ素混入で自主回収という同様のニュースがありました。

また、白血病治療薬アイクルシグ錠の偽造薬(米国、EUで流通)にWHOが警告を発出したというニュースもありました。
2年ほど前にC型肝炎治療薬ハーボニー配合錠の偽造薬が、日本で実際に調剤されて患者に販売されてしまったという事件があり、再発防止策が検討されました。
アイクルシグは日本でも承認されていますが、製造販売業者の大塚製薬は偽造薬が混入しないように目を光らせていると思います。

回収と聞くと一見ネガティブですが、
人々の健康を守るため、正規流通している医薬品には消費者の目に見えないところで、品質担保のために細心の注意が払われています。

個人輸入医薬品では上記のチェック作用が働かないこともあり、よりリスクの大きい選択になることに留意が必要です。

 

電話英語音声も追加しています。

おすすめの記事