11文!目と耳から服用するくすりの英語#29

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https://www.mag2.com/m/0001684701.html#detailbox

■例文:

厚生労働省は、新記載要領に基づく医療用医薬品の添付文書の英訳に関するガイダンスを発出した。

参考

https://www.pmda.go.jp/safety/consultation-for-mah/0002.html

http://www.phrma-jp.org/library/phrma_efpia_translate20171225/

(リンク先へのアクセスは自己責任でお願いします)

■音声:

■語彙:

厚生労働省:Ministry of Health, Labour, and Welfare (MHLW)
日本の健康、労働、福祉の3分野を統括する規制当局

新記載要領:new instructions (for preparing package inserts of prescription drugs)
添付文書の新記載ルール。2019年4月施行。
従来は1997年発出の記載ルールが用いられていた。

医療用医薬品: prescription drug(s)
広い意味では一般医薬品と対となる用語。原則として医師の処方箋が必要な医薬品。処方箋医薬品というカテゴリーがあるが、一部処方箋医薬品でない医療用医薬品が存在するので、処方箋医薬品より範囲が広い。

添付文書:package insert(s)
唯一法的に規定された医薬品の説明文書である。医薬品の箱の中に紙媒体で封入される他、PMDAや製薬企業のウェブサイト等からのダウンロードも可能である。

ガイダンス:guidance
実質的な手引き。lawやregulationのように法的拘束力はないが、規制当局の現在の考え方を示しており、特に理由がなければ実質的に順守を求められる。
良く似た用語でguideline(s)があるが、こちらも法的強制力はなく、現時点で最も良いと考えられる方法(ベストプラクティス)を推奨する内容になっていることが多い。ただ、より良い方法が提案できなければ順守することになる。

上記添付文書及び規制当局等についてより詳しく知りたければ以下の記事を参照のこと。

■重要表現・解説:

関する:regarding
concerningも使える。

発出:issue
規制当局が通知や照会事項等書面で指示や質問を出すときに用いる表現。

■訳:

The Ministry of Health, Labour, and Welfare issued an English translation guidance on prescription drug package inserts, prepared based on the new instructions.

■省エネフレーズ:

MHLW issued English translation guidance on prescription drug package insert, based on new instruction.

このフレーズを実際に自分で活用する際は、冠詞、完了形、3単現のs及び複数形を省略したり、前置詞のミスは無視しても十分通じる。
今回は、冠詞を削除し、複数形を単数形とした。また意味が変わらないので「Ministry of Health, Labour, and Welfare 」を「MHLW」、「prepared based on」を「based on」と簡素化した

省エネフレーズに関しての詳細は、製薬英語マスターの労力を8割減らすための3つのポイント(保存版)を参照されたい。

■編集後記

今回は、添付文書の新記載要領と英訳ガイダンスを採り上げました。

医療用医薬品の添付文書は想定読者が医師、薬剤師等の医療従事者なので一般の人はあまり目にすることはないかもしれません。

 

今回のエントリーで重要なことは以下の2つです。

 

医療用医薬品の説明書である添付文書の書式が変更されたということ。

そしてその新書式の添付文書の英訳に関するガイダンスが出たということ。

 

医療用医薬品というのは解説でも書きましたが、一言でいうと病院やクリニックで医師が処方する医薬品です。

添付文書というのは医薬品説明書であり、関連文書の中で唯一薬機法で規定されている文書です。製薬企業は医薬品を売ろうとすると有効性、安全性、品質の担保のために膨大な数の試験を行いCTDと呼ばれる申請書類にまとめて規制当局に提出します。規制当局はそれらの文書を評価して承認できるかできないかを判断します。

医薬品が承認されるとCTDの文書は一部が公開されますが、最も重要な位置づけの文書として公開され改訂され続けるのが添付文書です。

その意味では、製薬会社は膨大な試験を行って医薬品の承認を取得し、承認取得後は添付文書その他の文書の改訂、公表をすることで医療現場に医薬品が適正に使用するために必要な情報を提供する情報ビジネスということができます。

今回約20年ぶりに添付文書の記載ルールが変更された背景は、医療従事者がよりシンプルに必要な情報にアクセスできるということを念頭に記載の重複を削除したり、記載項目の順序等の整備が行われています。

新記載での一番大きな変更は、位置づけが良く分からないといわれていた「原則禁忌」と「慎重投与」がなくなり、「特定の背景を有する患者に関する注意」が新設されたことです。

 

新記載添付文書の英訳に関するガイダンスは、新規追加の項目名を除けば各見出し等の英訳に係る内容は、以前製薬協のサイトに公開されていたJapan Pharmaceutical Referenceに記載のものとそれほど変わらないように見えます。

一方で、「英訳版を日本語版の改訂と同様に改訂しPMDAサイトに公開する」点が大きな変更点です。

 

こちらは以前からPMDAが推進している医薬品審査情報の情報発信と関連しています。

PMDAのウェブサイトには既に承認されている医薬品の添付文書、審査報告書や申請資料等の情報が公開されています。

このうち、審査報告書については既に英訳版が一部公開されておりPMDAが日本で世界に先駆けて承認されている医薬品、新作用機序の医薬品や国際共同臨床試験で承認された医薬品などを優先的に英訳公開しているようです。

今回添付文書に関しても英訳版を日本語版と同様に適宜公開することでより英語での情報公開を充実させるという意図があるのでしょう。

 

医療用医薬品ではないドラッグストア等で購入できる一般用医薬品に関しても、添付文書等の英語を含めた外国語版への需要が高まっています。近年日本への観光客が増加しており、国策として今後も増加する方向へ舵を切ろうとしていることを考えると当然の成り行きでしょう。

 

一方で対外的に英語添付文書を公開し続けることは、上記Japan Pharmaceutical Referenceの一般公開が終了していることからも分かるように、製薬企業への負担が小さくありません。

添付文書は外部に公開されて誤字脱字を含めた間違いが一切許されない文書です。

英訳版で内容に齟齬がある場合は日本語の内容を優先するという免責事項はあるにしても、公開資料の維持にはそれ相応の労力が必要です。

 

近年より医薬品業界が国際化していること、そして日本に旅行したり居住したりする外国人の数が増えていることを考慮すると、医薬品の適正使用の観点から英語版添付文書の公開・維持は避けて通れない道なのかもしれません。

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