11文!目と耳から服用するくすりの英語#30

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https://www.mag2.com/m/0001684701.html#detailbox

■例文:

At $99 per month, Sanofi will provide flat-rate access to its insulin products, offering up to 10 boxes of pens and 10 mL vials per month regardless of a patient's income.

参考

http://www.news.sanofi.us/2019-04-10-Sanofi-provides-unprecedented-access-to-its-insulins-for-one-set-monthly-price

(リンク先へのアクセスは自己責任でお願いします)

■音声:

■語彙:

month:月

insulin product(s):インスリン製品

patient's income:患者の収入

■重要表現・解説:

at [値段]:○○の値段で。ここでは「1月あたり99ドルで」

per [期間]:期間あたり。ここでは「1月あたり」

provide:提供する

flat-rate access to[名詞]:○○への定額制アクセス。ここでは「インスリン製品への定額制アクセス」

offer up to [名詞]:○○まで提供する。offer [名詞]に「○○まで」を意味する[up to]が組み合わさったもの。

10 boxes of pens and 10 mL vials:10箱のインスリンペン及び10mLバイアル

regardless of [名詞]:○○に関わらず。ここでは患者の収入に関わらず

■訳:

Sanofiは患者の収入に関わらず1月あたり99ドルで、10箱のインスリンペン及び10mLバイアルまでのインスリン製品への定額制アクセスを提供する。

■省エネフレーズ:

Sanofi provide $99 monthly-rate access to insulin, offering up to 10 boxes of pens and 10 mL vials per month regardless of patient income.

このフレーズを実際に自分で活用する際は、冠詞、完了形、3単現のs及び複数形を省略したり、前置詞のミスは無視しても十分通じる。
今回は、冠詞、3単現のsを削除した。また、意味があまり変わらないので「At $99 per month, 」を削除し、「Sanofi will provide flat-rate access to its insulin products」を「Sanofi provide $99 monthly-rate access to insulin」と簡素化した。

 

省エネフレーズに関しての詳細は、製薬英語マスターの労力を8割減らすための3つのポイント(保存版)を参照されたい。

■編集後記

今回は、医薬品の定額制アクセスを採り上げました。

 

定額性サービスというと英語ではsubscription serviceと呼ばれ、サービスを提供する代わりに定期的に使用料を請求するビジネスモデルです。インターネットや携帯電話の通信費や電気、ガス代等生活を支えるインフラ等が代表例として挙げられます。

 

MicrosoftのOffice製品やアンチウイルスソフト等もともとはソフト自体にお金を払っていて新しいバージョンを購入する物販ビジネスモデルだったのに対して、ここ数年は月々いくらで最新版がメンテナンスフリーで使用できるという定額制のビジネスモデルが台頭してきています。

サービスを使用する側は初期費用が少な目で導入できメンテナンスも不要であることがメリットです。一方、デメリットとして使用する限り継続的に料金が発生します。

サービスを提供する側は逆に継続的に課金でき収入が安定するのがメリットです。ソフトウェア等一旦購入したら一定期間は買い替えしない人が大半だと思いますので、通常だったら単回の収益が平坦化されて定期的収益になります。

 

医薬品は病院で医師が処方する医療用医薬品とドラッグストア等で処方箋なしで買える一般用医薬品がありますが、どちらも医薬品ごとに値段がついており、その製品に対して料金を支払います。つまり、ビジネスモデル的には物販ビジネスモデルです。

 

今回のテーマは、今までありそうでなかった医薬品での定額制ビジネスです。

 

米国での医療用医薬品の価格が高騰している状況で、インスリン製品に対する価格抑制のプレッシャーが強まる中Sanofiが医療保険未加入者向けに定額制医薬品提供を打ち出しました。

 

以前も書きましたが、現在米国ではあらゆる医薬品の価格が高騰しており、トランプ政権が医療費削減を掲げて製薬会社をはじめとする医療業界に圧力をかけています。

医薬品価格の高騰している背景は、そもそも研究開発・製造費が高額な高分子医薬品(スペシャリティ医薬品)が押し上げているという点もあるのですが、一方で既存の医薬品もここ10年ほどで価格が高騰しているという現実があります。

今回トピックに挙がっているインスリンは、糖尿病特に1型糖尿病の患者さんにとっては生命線となる医薬品です。インスリンはこの10年ほどで価格(List price)が3倍になっているとの報告もあります。

この医薬品価格の高騰は製薬企業だけではなく、卸や薬局、またその3者の間に入って薬剤提供を管理するPharmacy benefit manager(PBM)に原因があります。

 

製薬会社はList priceという公の価格を設定しますが、その価格からリベートや割引、卸の費用、キャンペーン費用等を差し引いた価格がNet priceという正味の価格になります。

List priceはここ10年で暴騰しているということですが、Net priceは逆に下落しているという情報があります。

医薬品のサプライチェーンに絡む卸やPBMは大企業が市場を独占しているという背景があるため、問題となっている医薬品価格高騰を根本から変えるためには、大きな制度上の変更が必要になり容易でないでしょう。

 

少し長くなりましたが、今回のSanofiの定額制ビジネスモデルは上記のキャンペーン費用にテコ入れをした形で特定の患者層に対して割引を図ったことになります。

したがって、自主的に採用したというよりは、薬価高騰への対応として必要に迫られて採算度外視で採用せざるを得なかったと見て良いと思います(99ドルは通常の薬価の10分の1程度ということです)。

 

今後定額制医薬品供給ビジネスモデルに自主的に追随する製薬会社が出てくるのか分かりませんが、低所得者や囚人のC型肝炎治療のために政府が製薬会社と定額で契約して医薬品を提供するという事例は既に複数の州であるようです。

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